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学校法人の電子契約導入|法務確認と規程改正の論点
学校法人が電子契約を導入するときの法務(電子署名法・押印Q&A・私立学校法の議事録署名要件・電子帳簿保存法)と、公印・契約事務規程の改正論点を、法令と大学の公開規程で整理します。
この記事の内容
電子契約サービスの導入は、製品を選ぶ前に「学校法人として何が電子化できて、何を規程で決め直すのか」の整理が要ります。契約書そのものの電子化と、理事会議事録の電子署名、電子取引データの保存は、根拠となる法令が別です。
この記事では、電子契約の法的な根拠、私立学校法上の署名・押印要件、電子帳簿保存法の保存要件、公印・契約事務規程の改正論点を、法令と国税庁・文部科学省の資料、大学が公開している規程で整理します。製品の比較は扱いません(電子契約ジャンルは準備中)。
結論:法令等に特段の定めがない契約では押印の有無は効力に直ちに影響しない。理事会議事録の電子署名は施行規則の要件を満たす措置が必要。税法上の保存義務者が電子取引を行う場合は電子取引データの保存要件に従う
- 内閣府・法務省・経済産業省の「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)は、特段の定めがなければ押印しなくても契約の効力に影響はないとし、押印以外の手段での代替が有意義だとしています
- 電子署名法第3条は、本人だけが行うことができる電子署名がある電磁的記録を真正に成立したものと推定します。電子署名の定義は第2条第1項(本人の作成に係ることを示せる、改変の有無を確認できる)です
- 私立学校法第43条は、理事会議事録が書面なら出席理事と監事が署名または記名押印し(寄附行為の定めにより、出席理事のうちから選出された議事録署名人2人以上で代えることができる)、電磁的記録なら省令で定める「署名又は記名押印に代わる措置」を取ると定めています。施行規則第16条はその措置を電子署名法第2条第1項と同じ2要件を満たすものとしています
- 税法上の保存義務者が電子契約で契約書を交わす場合、それは電子取引データとして、国税庁の示す真実性の確保(タイムスタンプ・訂正削除履歴・事務処理規程など)と可視性の確保(検索要件など)を満たして保存します
1. 契約書の電子化の根拠
- 押印の要否:「押印についてのQ&A」問1は、特段の定めがある場合を除き、押印しなくても契約の効力に影響はないとしています。問2・問4は民事訴訟法第228条第4項の推定(二段の推定)は反証可能で効果は限定的、問3は押印以外の手段で代替することが有意義、と整理しています
- 電子署名の推定効:電子署名法第3条により、本人だけが行える電子署名が付された電磁的記録は真正に成立したものと推定されます。電子署名の定義(第2条第1項)は、その情報が本人の作成に係ることを示すためのものであること、改変の有無を確認できることの2要件です
- 大学の運用例:信州大学は令和6年1月25日から、相手方が導入した電子契約サービスによる電子署名契約を可能にし、対象を電子署名法第2条第1項への該当性がグレーゾーン解消制度で回答済みのサービスに限定しています(根拠は公印等規程・契約事務取扱規程)。東北大学は2021年11月に電子契約を導入し、2023年度に1,500件超、2024年4月から物品購入・受託研究・共同研究契約へ拡大して学内規則を整備したことを公開しています。近畿大学は令和4年4月1日から取引事業者向けに電子契約サービスでの契約締結を開始しました
2. 私立学校法上の署名・押印要件
| 文書 | 要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 理事会議事録(書面) | 出席理事と監事が署名または記名押印(寄附行為の定めにより、出席理事のうちから選出された議事録署名人2人以上で代えることができる)。10年間主たる事務所に備置き | 私立学校法第43条第2・3・5項 |
| 理事会議事録(電磁的記録) | 「署名又は記名押印に代わる措置」=電子署名法第2条第1項と同じ2要件を満たす措置 | 私立学校法第43条、施行規則第16条 |
| 議事録の記載事項 | 日時・場所・出席方法、経過の要領と結果、特別利害関係理事、意見の概要、出席者、議長 | 施行規則第15条 |
| 寄附行為 | 電磁的記録で作成可 | 私立学校法第23条第4項 |
| 評議員会議事録 | 作成・10年備置き・閲覧の規定。署名要件の条文は確認できず | 私立学校法第78条 |
文部科学省の「理事会議事録(例)」は、署名欄に理事・監事の印を置きつつ、「自筆署名の場合は押印しなくてもよい」「署名理事を定める寄附行為の定めがなければ出席理事・監事全員が署名等」と注記しています。令和2年の押印廃止の文部科学省令(12省令の改正)に私立学校法施行規則は含まれておらず、議事録の電子化は施行規則第16条の要件を満たす電子署名で行うことになります。学校が保護者等に求める押印の見直しは令和2年10月20日の通知(2文科初第1026号)で別途示されています。
3. 電子帳簿保存法の保存要件(税法上の保存義務者の場合)
国税庁の資料(令和6年1月からの電子取引データの保存方法、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和7年6月)によると、電子取引のデータは真実性の確保(タイムスタンプの付与、訂正削除の履歴が残るシステム、または訂正削除の防止に関する事務処理規程)と可視性の確保(モニター等の備付け、検索要件)を満たして保存します。令和4年度の宥恕措置は令和5年12月31日で廃止され、以後は「相当の理由」がある場合にダウンロードと出力書面の提示に応じることを条件とする猶予措置になっています。
学校法人(収益事業を行わない場合)への保存義務の適用範囲は本記事の調査では明文を確認できなかったため、法人の税務顧問と確認してください。
4. 規程改正の論点(大学の公開規程から)
以下の九州大学・東京科学大学・信州大学・東北大学は国立大学法人の規程・運用例です。私立学校法が適用される学校法人にそのまま適用できるものではなく、論点の参考として挙げています。
- 公印規程への電子署名の追加:九州大学「公印及び電子署名規程」(最終改正令和6年3月29日)は、第2条で電子署名を電子署名法第2条第1項で定義し、第6条で電子署名管守責任者、第10条で決裁済原議書との照合手続を定めています。東京科学大学「公印及び電子署名に関する規則」(令和6年10月1日)は第13条・別表で電子署名を使用できる文書を限定しています
- 契約事務規程:電子契約で締結できる契約の範囲(物品購入・受託研究・共同研究など)、相手方のサービスを使う場合の条件(信州大学の例:電子署名法該当性が確認済みのサービスに限定)、決裁との照合
- 契約書ひな形の条項:学校法人立命館の業務委託契約書ひな形(2024年8月)は「電磁的記録として作成した場合は、甲乙合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する」の条項を置いています
- 議事録の運用:理事会議事録を電磁的記録にする場合の電子署名の方法(施行規則第16条)と、寄附行為で署名理事を定めるかどうか
- 保存:電子取引データの保存場所、検索要件、事務処理規程の整備、10年備置きとの関係
5. 導入前チェック(法務・総務)
- 電子契約で締結する契約の種類と、当面書面のまま残す契約(不動産・重要財産など、規程で理事会決議が要るもの)を分けた
- 公印規程に電子署名の定義・管守責任者・決裁済原議との照合を追加する改正案を作った
- 契約事務規程に、電子契約の範囲と相手方サービス利用時の条件を定めた
- 契約書ひな形に電磁的記録・電子署名の条項を追加した
- 理事会議事録を電子化する場合、施行規則第16条の要件を満たす電子署名の方法と寄附行為の定めを確認した
- 電子取引データの保存方法(真実性・可視性)と事務処理規程を整備した
- 取引事業者への案内(近畿大学の例のように公開)と、相手方が電子契約に応じない場合の書面手続を残した
規程改正の論点を自法人の寄附行為・会議体に合わせて整理するところで支援が必要な場合は、導入・ルール作りの相談をご覧ください。
まとめ
学校法人の電子契約導入は、押印の有無が効力に直ちに影響しない契約書の電子化、施行規則第16条の要件を満たす電子署名が要る理事会議事録の電子化、税法上の保存義務者が従う電子取引データの保存の3つに分けて考えます。規程改正の論点は、公印規程への電子署名の追加、契約事務規程での範囲と条件、契約書ひな形の条項、保存の事務処理規程で、国立大学法人(九州大学・東京科学大学・信州大学・東北大学)が公開している規程と運用が、学校法人の規程を作るときの参考になります。
出典・参考情報
- 電子署名及び認証業務に関する法律(e-Gov法令検索) (確認日:2026-09-04)
- 内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」(令和2年6月19日)(公式) (確認日:2026-09-04)
- 私立学校法(e-Gov法令検索) (確認日:2026-09-04)
- 私立学校法施行規則(e-Gov法令検索) (確認日:2026-09-04)
- 文部科学省「理事会議事録(例)」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月)(公式) (確認日:2026-09-04)
- 近畿大学「電子契約サービスによる契約締結の開始について」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 東北大学 DX cabiNET 電子契約の事例(公式) (確認日:2026-09-04)
- 信州大学 財務部「電子署名による契約書の作成について」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 九州大学 公印及び電子署名規程(公式) (確認日:2026-09-04)
- 東京科学大学 公印及び電子署名に関する規則(公式) (確認日:2026-09-04)
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