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大学のシステム選定で要求仕様書を作る手順(設置形態別)

国立大学法人(政府調達協定・デジタル庁標準ガイドライン)、私立(理事会決議・寄附行為)、公立大学法人(法人規程)で異なる調達ルールを踏まえ、要求仕様書に書く項目と作成手順を公式資料で整理します。

この記事の内容
  1. 結論:調達ルールで「誰が・いくらから・どの方式で」を先に確定し、仕様書は要件(What)と評価方法を分けて書く
  2. 1. 設置形態別の調達ルール
  3. 2. 要求仕様書に書く項目(DS-100の記載事項を骨格に)
  4. 3. 作成手順(共通)
  5. 4. 設置形態別の確認点
  6. まとめ

「システムを入れ替えたいので仕様書を作ってほしい」と情報システム部門や財務部門に依頼が来たとき、最初に確認すべきなのは製品ではなく、自法人の調達ルールです。国立大学法人は政府調達協定と一般競争入札、私立大学は設置者である学校法人の理事会決議・内部規程と寄附行為、公立大学法人は法人規程と設立団体との関係で、仕様書に求められる中身と手続が変わります。

この記事では、設置形態ごとの調達ルールを公式資料で整理したうえで、要求仕様書(国の用語では調達仕様書)に書く項目と作成手順をまとめます。製品の比較は各ジャンルの記事(財務会計議事録AI)を、ベンダーへの確認項目は導入チェックリストをご覧ください。

結論:調達ルールで「誰が・いくらから・どの方式で」を先に確定し、仕様書は要件(What)と評価方法を分けて書く

  • 国立大学法人は政府調達協定の対象機関で、物品・サービスは10万SDR(令和8〜9年度は2,000万円)以上が協定の対象、コンピュータ製品・サービスは80万SDR(1億6,000万円)超で総合評価落札方式の分野別基準があります。一般競争入札が原則で、随意契約や公募の上限額は法人の規程で決まります
  • 私立大学・学校法人には国の調達方式の縛りはありませんが、契約主体は設置者である学校法人で、私立学校法上、重要な資産の処分・多額の借財・予算などは理事会が決め、理事に委任できません。経常費補助金の対象経費の考え方も仕様と予算の組み方に関わります
  • 公立大学法人は地方独立行政法人法の下で法人の契約規程が入札・随意契約の基準額を定めます。条例で定める重要財産の譲渡・担保に限り、設立団体の長の認可と議会の議決が必要です(通常のシステム調達には及びません)
  • 仕様書の章立ては、デジタル庁の標準ガイドライン(DS-100)の「調達仕様書の作成等」が定める記載事項(調達案件の概要、関連調達、作業の実施体制・方法、前提・制約条件、附属文書としての要件定義書など)が骨格として使えます。DS-100は政府情報システム向けの文書で、国立大学法人にも参考になりますが、適用の有無は法人規程等で確認してください

1. 設置形態別の調達ルール

国立大学法人

  • 政府調達協定の対象機関(協定附属書1付表3)。令和8年4月1日〜令和10年3月31日の基準額は、物品等・その他サービス10万SDR=2,000万円、建設工事450万SDR=9億円、建築のためのサービス45万SDR=9,000万円(財務省告示に基づく内閣官房の円貨換算)
  • 総合評価落札方式の分野別基準:コンピューター製品・サービス80万SDR超=1億6,000万円、電気通信機器・サービス(既製品)38.5万SDR超=7,700万円
  • 文部科学省のFAQ(平成29年度時点の法令ベース)は、国立大学法人は一般競争入札を原則とすることが必須で、「世界最高水準」といった理由だけでは随意契約にできないこと、予定価格調書が必要不可欠であること、公募・企画競争は随意契約の一形態で政府調達の対象案件では使えないことを示しています
  • 随意契約・見積り合わせの基準額は法人ごとの規程で異なります。東京大学は政府調達2,000万円以上、一般競争1,000万円以上、公開見積り合わせ500〜1,000万円未満、見積り合わせ100〜500万円未満。京都大学は予定価格1,000万円未満で随意契約可、500万円以上は公募型見積り合わせ、仕様書等により予定価格調書を作成(契約事務取扱規則第13条・第37条)
  • 情報システムの調達仕様書の作り方は、デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」のDS-100(2026年6月12日決定)第3編第6章「調達」に記載事項があり、テンプレート(調達仕様書標準テンプレート・要件定義書標準テンプレート)も公開されています。調達仕様書の作成に直接関与した事業者は入札に参加できません
  • セキュリティ要件の書き方は、国家サイバー統括室「情報システムに係る政府調達におけるセキュリティ要件策定マニュアル」(2025年7月1日)が参照先です
  • 公開されている入札公告の例:北海道国立大学機構「財務会計システム 一式」(令和8年1月6日公告、全省庁統一資格A〜C、入札説明書を交付)、東京大学「Webホスティングサービス 一式」(令和8年8月21日、リバースオークション)

私立大学・学校法人

  • 私立学校法第36条第3項により、重要な資産の処分・譲受け、多額の借財、重要な組織の設置変更、内部統制体制の整備、予算・事業計画の作成変更、その他の重要事項は理事会が決定し、理事に委任できません。資産処分・借財・予算等は評議員会の意見聴取が事前に必要です(第4項)
  • 寄附行為の必要的記載事項に「資産及び会計に関する事項」「理事会に関する事項」があり(第23条)、契約権限や決裁基準は寄附行為と法人の規程で決まります
  • 経常費補助金の対象経費(教育研究経常費)には「学生の教育又は専任教員等が行う研究に直接必要な機械器具・備品・図書・消耗品の購入費」などが含まれ、1個または1組500万円以上の機械器具・備品は除かれます(私立大学等経常費補助金交付要綱・取扱要領)。システム導入費が補助対象になるかは要領に個別の明文がないため、事業団・所轄庁に確認が必要です
  • 私学の調達手続に関する国の公的ガイドは確認できませんでした。政府情報システム向けのDS-100の章立てを骨格として流用し、決裁基準は法人規程に従うのが実務です

公立大学法人

  • 地方独立行政法人法第33条で会計は原則企業会計原則、第22条で業務方法書は設立団体の長の認可、第44条で条例で定める重要財産の譲渡・担保は設立団体の長の認可と議会の議決が必要です。法律自体に入札・随意契約の基準額の規定はなく、法人の契約規程で定めます
  • 法人規程の例:公立大学法人大阪は一般競争入札を原則とし、随意契約は工事・買入れ・その他とも1,000万円未満(契約事務取扱規程第2条・第17条)
  • 参考として、自治体側の随意契約基準額は令和7年4月1日施行で引き上げられています(都道府県・指定都市の財産の買入れ160万円→300万円など。地方自治法施行令別表第5)。公立大学法人の規程が施行令に準拠すべきとする総務省通知は確認できませんでした
  • 公立大学の要求仕様書の公開例:横浜市立大学「基幹ネットワークシステム構築及び運用保守に係る要求仕様書」、会津大学「履修計画システム要求仕様書」、滋賀県立大学「学務事務管理システム仕様書」

2. 要求仕様書に書く項目(DS-100の記載事項を骨格に)

デジタル庁のDS-100「調達仕様書の作成等」は、記載事項を次のように定めています(ア〜サ)。私立・公立でもこの章立てが使えます。

  1. 調達案件の概要(目的、背景、対象範囲、期間)
  2. 調達案件および関連する調達案件(既存システム・他の契約との関係)
  3. 業務・システムの要件(附属文書の要件定義書を参照)
  4. 作業の実施内容、成果物、納入
  5. 作業の実施体制・方法(プロジェクト管理、会議体、報告)
  6. 作業の実施に当たっての遵守事項(セキュリティ、個人情報、機密保持)
  7. 成果物の取扱い(知的財産、契約不適合責任)
  8. 入札参加資格
  9. 評価(総合評価の場合の評価項目・配点)
  10. その他特記事項(前提・制約条件、仕様書変更手順)
  11. 附属文書(要件定義書、現行システムの構成図、データ量など)

要件定義書は「機能要件」「非機能要件(性能・可用性・セキュリティ・保守)」「移行要件」「運用要件」に分け、公式情報で確認した各製品の対応状況(条件別サービス比較)を、要件ごとに「必須/望ましい/任意」で書き分けます。

3. 作成手順(共通)

  1. 調達ルールの確認:設置形態に応じて、金額区分(協定対象・一般競争・随意契約)と決裁権限(理事会・学長・部局長)を規程で確認する
  2. 現状と課題の整理:現行システムの契約期限、データ量、連携先、法改正への対応期限(新学校法人会計基準など)
  3. 要件の洗い出し:利用部署(財務・研究協力・情報システム・研究室)のヒアリング。会計基準・研究費・検収・電子決裁・外部EC連携など制度要件を先に固定する
  4. 市場調査:公式情報で対応状況を確認し、要件の実現可能性を確かめる。ベンダーへの情報提供依頼(RFI)は、公平性の確保、情報提供の範囲、仕様策定への関与の有無を契約担当部門が判断する(国立は仕様書作成に直接関与した事業者の入札制限がある)
  5. 要件定義書と調達仕様書の作成:DS-100の章立てで書く。評価方法(総合評価か最低価格か)と配点を決める
  6. セキュリティ要件:国家サイバー統括室のマニュアルを参照し、データ保存場所・認証・ログ・委託先管理を要件化
  7. 決裁と公告:規程に従い理事会・学長決裁、政府調達対象なら公告期間を確保
  8. 評価と選定:評価委員会での採点、既存システムの継続や「導入しない」も含めた比較、選定理由の文書化

4. 設置形態別の確認点

国立大学法人私立大学・学校法人公立大学法人
金額の区分政府調達2,000万円以上、法人規程で一般競争・随契の基準法人規程・寄附行為法人の契約規程(例:随契1,000万円未満)
決裁契約担当役・学長、規程に従う学校法人の理事会・内部規程(重要事項は委任不可)、評議員会の意見聴取理事長・学長、法人規程。条例所定の重要財産の譲渡・担保のみ設立団体の長の認可・議会議決
仕様書の参照先DS-100、セキュリティ要件策定マニュアル国の公的ガイドは無し。DS-100を骨格に法人規程、DS-100を骨格に
予算との関係運営費交付金・外部資金経常費補助金の対象経費の考え方運営費交付金(設立団体)

要求仕様書の作成や評価方法の設計を、自法人の規程・会議体に合わせて進めるところで支援が必要な場合は、導入・ルール作りの相談をご覧ください。

まとめ

要求仕様書は、製品を選ぶ前に自法人の調達ルールを確定するところから始まります。国立大学法人は政府調達協定と一般競争入札、私立は学校法人の理事会決議・内部規程と寄附行為、公立は法人規程(重要財産に限り設立団体の認可)が枠組みで、仕様書の章立てはデジタル庁のDS-100が骨格になります。制度要件(会計基準・研究費・検収・セキュリティ)を先に固定し、公式情報で対応状況を確かめ、評価方法と選定理由を文書に残す手順で進めてください。

出典・参考情報

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