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教職員向け生成AI研修の設計|カリキュラム例と進め方
大学が公式に公開している教職員向け生成AI研修の実施記録(北海道大学・九州大学・熊本大学・滋賀大学・浜松医科大学・東洋大学など)と、文部科学省・IPAの公的教材から、研修の到達目標・単元・時間・対象の組み方を整理します。
この記事の内容
生成AIのガイドラインを作った次に来るのが「教職員にどう研修するか」です。ツールの操作説明だけで終わる研修では、業務での利用に結びつきにくいという問題意識から、連続シリーズや演習を組み合わせる大学が公開事例に見られます。
この記事では、大学が公式サイトで公開している教職員向け生成AI研修の実施記録と、文部科学省・IPA・日本私立大学連盟の公的教材から、研修の到達目標・単元・時間・対象の組み方を整理します。研修の内容や参加者数はすべて各大学の公開記事に基づきます。ガイドラインの条項は大学の生成AIガイドライン比較をご覧ください。
結論:「基礎(何ができて何が危ないか)」「実務演習(自分の業務で使う)」「事例共有(学内の使い手を見せる)」の3段で設計し、1回で終わらせない
- 公開されている大学の研修は、①生成AIの仕組みと限界・安全な使い方を扱う基礎講義、②自分の業務(申請書、議事録、問い合わせ対応、Excel)で試す演習、③学内の教職員が事例を持ち寄る共有会、の3つの型に分かれます
- 北海道大学(全6回・延べ840名以上)や九州大学(全7回)のような連続シリーズと、浜松医科大学や大阪大学のような「基礎編→実践編」の2段構成の両方が公開事例にあります
- 対象を「初めて触れる職員」に絞った回(浜松医科大学、滋賀大学)と、事務職員だけを集めた地区横断の回(熊本大学)があり、教員向けFDとは分けて設計されています
- 到達目標は「不安を解消する」「リテラシーを醸成し、活用できる職員を育てる」「プロンプトは覚えなくてもいい」など、ツール操作より姿勢と判断に置かれています
1. 大学の公開事例から見える設計パターン
| 大学(設置形態) | 研修名 | 形式・時間 | 対象・参加 | 構成 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道大学(国立) | シリーズ研修「生成AIと教育研究活動」 | 2024年5〜11月 全6回。毎回2名が20分ずつ話題提供+質疑 | 教職員。延べ840名以上 | 第1〜4回 教職員の事例(教育支援・研究支援・業務効率化)、第5回 学生の視点、第6回 総括。目的は「教職員が生成AIを取り入れる際の不安を解消」 |
| 九州大学(国立) | FDシリーズ「生成AIを大学の教育・学習・業務にどのように組み込むか?」 | 2024年3月〜2025年9月 全7回、ハイブリッド | 学内外の大学教職員・大学院生。対面定員50名 | 第3回・第5回が「大学業務における生成AI活用の現在地:基本編/実践編」 |
| 熊本大学(国立) | 九州地区事務職員向け生成AI勉強会 | 2024年12月6日 | 九州・沖縄地区の国立大学法人等の事務職員。300名超 | 講義「生成AIとは何か」→VBA(マクロ)演習→10年後を予測するグループ討議。目的は「リテラシーの醸成・活用できる事務職員の育成・動機付け」 |
| 滋賀大学(国立) | 生成AI研修(スキルアップセミナー「AI活用による業務改善研修」) | 2024年12月17日 | 職員 約20名 | 「プロンプトは覚えなくてもいい」を掲げた業務改善研修。別途FDセミナー(2026年3月) |
| 浜松医科大学(国立) | 生成AI活用講義(事務職員向け) | 2026年4月23日、Teams配信 | 「初めて触れる職員」が主対象。72名+アーカイブ50名超 | 学内の情報基盤担当職員が講師。6月に実践編 |
| 佐賀大学(国立) | 大学教員のための生成AI実践講座(Copilot活用) | 2025年12月4日 Zoom 60分 | 定員1,000名 | 講師は日本マイクロソフト。それまでに教員向けChatGPT研修を3回実施 |
| 大阪大学(国立) | FD「授業における生成AIの活用法【基礎編】」 | オンデマンド1時間(2025年度通年) | 全教職員 | 基礎知識と利用時の注意事項。発展編あり |
| 東京大学(国立) | 教育における生成AI活用推進リーダープログラム | オンデマンド約6時間×2+ライブ1.5時間×3+発表 | 無料・完全オンライン | 「生成AIについて」「活用・推進について」の2部。同研究室は1時間・4時間・6時間版の教員向け講座も実施 |
| 東洋大学(私立) | 研修会「生成AI時代の大学DX」 | 2024年11月20日 | 全教職員 約200名 | 導入背景・AIの仕組み・プロンプト・学内AIの実演。第2回(2025年2〜3月)は演習で約30名 |
| 沖縄国際大学(私立) | FD研修会「初等中等教育における生成AIの活用事例と大学での生成AIの活用について」 | 2025年12月12日 90分 | 教員 | 外部講師による事例講義 |
2. 到達目標の置き方
公開事例の目的の文言は、ツールの操作習得ではなく、次のような姿勢と判断に置かれています。
- 不安の解消(北海道大学)
- リテラシーの醸成、活用できる事務職員の育成、動機付け(熊本大学)
- 「プロンプトは覚えなくてもいい」(滋賀大学)
これは、公的な人材育成の枠組みとも整合します。IPAはデジタルスキル標準(DXリテラシー標準)に生成AIの記載を追加し、DX推進スキル標準ver.1.2(2024年7月)では共通スキルとして「新技術に触れた上でのインパクト・リスクの見極め」を挙げています。経済産業省の「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方 2024」は「問いを立てる力」「仮説を立て・検証する力」「評価する・選択する力」を挙げています。研修の到達目標はこの3つの力を業務の言葉に翻訳したものになります。
3. カリキュラム例(事務職員向け・3段構成)
公開事例の構成を組み合わせた例です。時間は各大学の実施例(60〜90分単位)に合わせています。
第1回 基礎(60〜90分・全員)
- 生成AIの仕組みと限界(誤り・最新情報・出典の扱い)
- 学内ガイドラインの読み合わせ:入力してはいけない情報、契約製品と公開サービスの区分、検証責任(ガイドライン比較)
- 学内で使える製品(全学契約があればその範囲、管理者設定)
- デモ:文書の要約・下書き・言い換えを、公開済みまたは匿名化した文書で1つ
第2回 実務演習(90分・部署別または希望者)
- 参加者が自分の業務から題材を1つ持ち込む(申請書の下書き、規程の読み解き、問い合わせ回答の案、表計算の関数やマクロ)。機密情報・個人情報を含まない題材にする
- 手順の型:目的→前提→出力形式→検証、を1枚のワークシートで
- 出力の検証と修正を必ず入れる(誰が確認するか)
- 会議記録に使う場合は録音・保存・削除のルールを確認(議事録AIの学内利用ガイドラインの作り方)
第3回 事例共有(60分・数か月後)
- 各部署の使い手が20分ずつ事例を紹介(北海道大学型)
- うまくいかなかった例と、ガイドラインの改定要望
- 次年度の全学契約・製品選定への入力
4. 実施形態と対象の決め方
- 対象の分け方:教員向けFD(授業・研究)と職員向けSD(業務)は目的が違うため分ける。職員向けでも「初めて触れる職員」向けの回を用意する(浜松医科大学)
- 形式:配信とアーカイブを併用した例(浜松医科大学は72名+アーカイブ50名超)、オンデマンド(大阪大学・東京大学)で通年提供する例がある
- 講師:学内の情報基盤担当職員(浜松医科大学)、学内の研究者(東京大学・九州大学)、ベンダー(佐賀大学のMicrosoft)、外部の専門家(東洋大学)のいずれも公開事例があり、内製と外部の組み合わせで設計できる
- 地区横断:熊本大学の九州地区事務職員向け勉強会(300名超)のように、法人の枠を超えて集める形も公式に記録されています
5. 公的な教材の所在
- 文部科学省「生成AIに関する教員向け研修動画シリーズ」(令和5年9月、全3本)。初等中等向けだが、ガイドラインの理解・基本的な考え方・性質と限界の構成は大学の基礎回にも転用できる
- 文部科学省「生成AIの利用に関するオンライン研修会」(令和5年9月、全5回・各60分)。「教育活動・教務で活用できるプロンプト紹介」などの回がある
- 文部科学省の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」巻末に「学校現場で活用可能な研修教材等」の一覧(大学には直接適用されないが教材一覧として参照可)
- IPA「AI利活用のための人材育成」(デジタルスキル標準の生成AI対応)
- 日本私立大学連盟「大学教育における生成AIの活用に向けたチェックリスト〔第1版〕」(令和5年7月)。組織的検討事項に「教員に対して生成AIの理解を深めるFDを行っているか」
6. 研修を設計する前に決めること
- 研修の目的を「不安の解消」「業務での活用」「推進役の育成」のどれに置くか
- 全学契約の製品があるか。無ければ研修で使うサービスと入力してよい情報の範囲
- ガイドラインが先か研修が先か(自学の状況で決める)
- 対象(全教職員・事務職員・初心者・推進役)と形式(対面・配信・オンデマンド)
- 講師の内製と外部の組み合わせ、事例共有の担い手
- 効果の測り方(受講者数、事例数、ガイドラインへの改定要望)
研修の設計や学内ガイドラインとの接続に支援が必要な場合は、導入・ルール作りの相談をご覧ください。
まとめ
大学が公開している教職員向け生成AI研修は、基礎講義・実務演習・事例共有の3つの型に分かれ、連続シリーズや基礎編→実践編の2段構成で設計されています。到達目標はツール操作ではなく、不安の解消と業務での判断力に置かれ、IPAや経済産業省が示す「見極める力」「問いを立てる力」と重なります。ガイドラインの読み合わせを基礎回に組み込み、自分の業務の題材で演習し、数か月後に事例を持ち寄る流れで設計すると、1回で終わらない研修になります。
出典・参考情報
- 北海道大学 高等教育研修センター「シリーズ研修 生成AIと教育研究活動」報告(公式) (確認日:2026-09-04)
- 九州大学 未来人材育成機構 FDシリーズ「生成AIを大学の教育・学習・業務にどのように組み込むか?」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 熊本大学「九州地区事務職員向け生成AI勉強会」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 滋賀大学「生成AI研修(第10回スキルアップセミナー)」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 浜松医科大学「生成AI活用講義(事務職員向け)」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 佐賀大学「大学教員のための生成AI実践講座」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 大阪大学 FD「授業における生成AIの活用法【基礎編】」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 東京大学 吉田塁研究室「教育における生成AI活用推進リーダープログラム」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 東洋大学 研修会「生成AI時代の大学DX」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 文部科学省「生成AIに関する教員向け研修動画シリーズ」(公式) (確認日:2026-09-04)
- IPA「AI利活用のための人材育成」(公式) (確認日:2026-09-04)
- 日本私立大学連盟「大学教育における生成AIの活用に向けたチェックリスト〔第1版〕」(公式) (確認日:2026-09-04)
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