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大学の生成AIガイドライン比較|教職員向け条項の整理

国立・公立・私立16大学が公開する生成AI利用ガイドラインを、対象(教職員の業務利用・学生・研究)と主要条項(機密情報の入力禁止・契約製品の指定・検証責任・著作権・窓口)で横断整理。全学導入の公表大学も一覧化。

この記事の内容
  1. 結論:本稿で確認した16件では、教職員の業務利用を明文化したものは6件。「機密情報の入力禁止」「契約製品の指定」「検証責任」の条項が複数で確認できた
  2. 1. 対象範囲の比較
  3. 2. 主要条項の比較(教職員に関わるもの)
  4. 3. 生成AI製品の導入(全学・部門・授業単位)を公式に公表している大学・学校法人
  5. 4. 国の関連文書
  6. 5. 自学のガイドラインを作るときの論点
  7. まとめ

「生成AIのガイドラインを作れ」と言われた大学の担当者が最初にやるのは、他大学の公開文書を集めることです。ところが多くの大学の文書は学生の授業利用を対象にしていて、教職員の業務利用(会議記録、文書作成、問い合わせ対応)に触れているものは限られます。

この記事では、公式サイトで本文が読める16大学(国立8・私立6・公立2)の生成AIガイドラインを、対象と主要条項で横断整理します。文書名・日付・引用はすべて各大学の公開ページに基づき、評価や順位は付けません。学内限定の文書は扱っていません。議事録AIに絞ったガイドラインの作り方は議事録AIの学内利用ガイドラインの作り方をご覧ください。

結論:本稿で確認した16件では、教職員の業務利用を明文化したものは6件。「機密情報の入力禁止」「契約製品の指定」「検証責任」の条項が複数で確認できた

  • 16大学のうち、教職員の業務利用を明確に対象にしているのは東京科学大学、広島大学、慶應義塾、東京都市大学、東京歯科大学、大阪学院大学の6大学。多くは学生の授業・レポート利用が中心で、教職員には「留意事項」として触れる形です
  • 16件の多くで、個人情報・機密情報を外部の生成AIに入力しないこと、出力の正確性を利用者が検証する責任、著作権への配慮の条項が確認できました
  • 2026年に改定・制定された文書では、大学が契約した製品と公開サービスを区分する書き方が見られます。ただし内容は大学ごとに異なり、慶應義塾は法人全体契約AIに限り学習に使われないと明記、大阪学院大学は全学契約製品を「学習に利用されない設定」と記載、広島大学は再学習を無効にできない環境での入力制限、東京歯科大学は学習利用が「制御・管理された環境」と記載しています(第2節)
  • 相談窓口を文書内に明記している大学は東京大学、東北大学、九州大学、広島大学、京都府立大学など一部です

1. 対象範囲の比較

凡例:a=教職員の業務利用、b=学生の授業・レポート利用、c=研究利用。○明記、△一部・間接、-記載なし。

大学(設置形態)文書名公開・改定日abc
東京大学(国立)AIツールの授業における利用について/当面の全学構成員向け生成AIサービス提供方針2023-04-28/2024-03-27
東北大学(国立)ChatGPT等の生成系AI利用に関する留意事項(教員向け)2023-03-31(2023-08-30更新)
京都大学(国立)教育・学修における生成AI利用に関するガイドライン2026-03-11
大阪大学(国立)生成AIの利用について(総長名)/生成AI教育ガイド2023-04-17
九州大学(国立)教育における生成AIの利活用に関する基本姿勢/利活用の注意点(教員向け)2023-08-23/09-25
筑波大学(国立)教育における生成AI活用のガイドライン2024(学生向け)2024-10-22
東京科学大学(国立)生成AI利用ガイドライン(全教職員・学生)2025-09-05改定
広島大学(国立)生成AIの利用等に関するガイドライン(全構成員)2026-03-16
早稲田大学(私立)生成AIなどの利用について(副総長)2023-04-18
慶應義塾(私立・一貫教育校と病院を含む法人全体)慶應義塾における生成AIの利用ガイドライン2026-07-28更新
上智大学(私立)教育における生成AI利用に関するガイドライン2023-06策定(2025-11-11更新)
東京都市大学(私立)生成AIの利活用に関する基本方針+4ガイドライン(学習・研究・教育・業務利用)2024-05-09
東京歯科大学(私立)生成AIの利用ガイドライン(全教職員・全学生)2026-04-01
大阪学院大学(私立)生成AI利用ガイドライン2026-04-01更新
東京都立大学(公立)AI利活用ポリシー2024-04-24
京都府立大学(公立)生成AI利用ガイドライン2023-07-03

東京都市大学は「業務利用におけるガイドライン(事務職員向け)」を独立した文書として制定しています(PDF本文は本記事作成時点で取得できなかったため、条項の引用は行っていません)。

2. 主要条項の比較(教職員に関わるもの)

機密情報・個人情報の入力禁止

ほぼ全大学が条項を持ちます。書き方の例を挙げます。

  • 東京科学大学:無償の外部サービスは「要機密情報や個人情報の入力は禁止」
  • 東京歯科大学:「未発表の研究成果、研究データ、個人情報…業務上の秘匿情報、契約情報等を…入力してはなりません」
  • 大阪学院大学:「成績、学生情報、人事、契約情報、未公開研究データ等を、安易に外部の生成AIへ入力しない」
  • 慶應義塾:「特定個人情報は法人全体契約AIにも入力できません」(契約製品でも入力できない情報を明示)
  • 東北大学:入試に関する情報や学生・教職員の個人情報の流出リスクを明記

契約製品の指定と学習利用の扱い

2025〜2026年の文書に共通する書き方です。

  • 慶應義塾:「法人全体契約AIを使う:Google Gemini、Gemini Notebook、Notion AI、Microsoft 365 Copilot」「この場合に限り、入力データがAIの学習に使われることはありません」。職員は2026年4月以降、法人全体契約のMicrosoft 365 Copilot
  • 広島大学:「再学習を無効にできない…環境では、重要な情報を入力しない」。2026年3月時点の全学契約はCopilot Chat、Google Gemini、NotebookLM
  • 大阪学院大学:公開型(推奨度低)・個人契約型(中)・大学契約型(高)の3区分。全学契約のGemini・NotebookLMは「入力データがAIの学習に利用されない設定」
  • 東京歯科大学:法人契約は「モデル学習への利用が制御・管理された環境」、個人契約は控える
  • 東京大学:Gemini、Microsoft 365 Copilot Chat、Teams Copilot(教職員)などを列挙し、「ChatGPTについては全学での契約はありません」と明記
  • 筑波大学・東北大学:オプトアウト設定や手続を案内

出力の検証責任

  • 東京科学大学:「利用者はその利用内容に対して最終的な責任」
  • 広島大学:「出力結果の利用に関する責任は、利用者自身が負う」
  • 慶應義塾:「出力は必ずファクトチェックする」「最終的な判断と責任は、すべて利用者本人」
  • 京都大学:「出力結果を常に疑い、一次資料に基づいた厳格な検証」
  • 東京都立大学:「生成結果の正しさを盲信しないという態度が必要」

著作権

東京大学・東北大学・大阪大学・九州大学・筑波大学・東京科学大学・広島大学・京都府立大学などが著作権侵害や剽窃への注意を条項に含めています。筑波大学は侵害の疑いがあれば「使用しない」、広島大学は「著作権の侵害、剽窃・盗用がないことを確認」と踏み込んでいます。

相談窓口

東京大学(uteleconサポート窓口)、東北大学(オンライン教育支援室)、九州大学(学務企画課)、広島大学(情報セキュリティ推進機構や文書管理者への報告・相談)、京都府立大学(AIデータサイエンス教育研究センター等)が文書内に窓口を明記しています。

3. 生成AI製品の導入(全学・部門・授業単位)を公式に公表している大学・学校法人

大学製品対象公表
東北大学ChatGPT(業務)教職員2023-05-18
東京大学Gemini/Microsoft 365 Copilot Chat 等全学構成員2024-03-27
滋賀大学ChatGPT Edu学生2025-03-12
室蘭工業大学Microsoft 365 Copilot全学事務部門2025-05-26
新潟大学ChatGPT Edu演習履修学生(定員400)と関係教職員(限定導入)2025-08-29
広島大学Copilot Chat/Gemini/NotebookLM全構成員2026-03(ガイドライン別表)
慶應義塾Microsoft 365 Copilot(有料ライセンス)職員(2026年4月以降)2026-07-28(ガイドライン)
学校法人立教学院Google AI Pro for Education全専任職員2026-04-27
北里大学ChatGPT Edu全学生約9,500・全教職員約6,2002026-04-27
愛媛大学Microsoft 365 Copilot教職員約3,0002026-07-10
東京歯科大学Gemini/NotebookLM/LeapSpace全教職員・全学生2026-04-01
大阪学院大学Gemini/NotebookLM学生・教職員2026-04-01

いずれも各大学の公式ページに基づきます。日本大学・近畿大学・駒澤大学にも導入の報道がありますが、大学公式ページの本文が確認できなかったため表に含めていません。

4. 国の関連文書

  • 文部科学省「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」令和5年7月13日事務連絡(高等教育局)。2026年9月時点で、これ以降の大学・高専向け追加通知は確認できません
  • 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」令和6年12月26日。小中高向けで、大学には直接適用されません
  • 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」令和8年3月31日(1.0版は2024年4月19日)
  • 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」令和5年6月2日
  • デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」2025年6月13日更新(東京科学大学のガイドラインが参照)

5. 自学のガイドラインを作るときの論点

  1. 対象:学生の授業利用だけか、教職員の業務利用・研究利用まで含めるか。業務利用を含めるなら、事務職員向けの文書を分けるか(東京都市大学型)、全構成員で一本にするか(東京科学大学・広島大学型)
  2. 製品の区分:公開型・個人契約型・大学契約型の3区分(大阪学院大学型)で、入力できる情報の範囲を区分ごとに決める
  3. 入力禁止情報の列挙:個人情報・特定個人情報・成績・人事・契約・未発表研究データ・入試情報。契約製品でも入力できない情報(特定個人情報など)を分ける
  4. 検証責任と成果物の扱い:出力の検証、AI生成物であることの明示(京都府立大学)、著作権の確認
  5. 管理者設定:契約製品の学習利用オプトアウト、共有範囲、ログ。会議記録に使う場合は議事録AIの学内利用ガイドラインの作り方の線引きを組み込む
  6. 窓口と改定:相談・報告先の部署名、改定の担当と周期(2023年の文書を2026年に改定した大学が多い)

ガイドラインを自学の規程・会議体に落とすところで支援が必要な場合は、導入・ルール作りの相談をご覧ください。

まとめ

本稿で確認した16件の生成AIガイドラインは、学生の授業利用を対象にしたものが多く、教職員の業務利用まで明文化したものは6件でした。機密情報の入力禁止、契約製品の指定、出力の検証責任の条項が複数で確認でき、2026年の文書では大学契約の製品と公開サービスを区分する書き方が見られます。自学で作るときは、対象範囲、製品の区分、入力禁止情報の列挙、検証責任、管理者設定、窓口の6点を先に決めてください。

出典・参考情報

導入や学内ルール作りの支援(運営会社・初回相談は無料)は導入相談のページをご覧ください。