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公的研究費ガイドライン要点と体制整備

文部科学省の公的研究費ガイドライン(令和3年2月改正)の要点を、責任体系・誓約書・発注検収・内部監査・履行状況報告・体制不備への措置に分けて整理し、毎年度整える体制と提出書類をまとめます。

この記事の内容
  1. 結論:責任者3階層と監事の役割を明文化し、事務部門による発注・検収と当事者以外のチェック、内部監査、年度ごとのチェックリスト提出を回す
  2. 1. ガイドラインの位置づけと改正の経緯
  3. 2. 責任体系(第1節)
  4. 3. 誓約書と教育・啓発(第2節)
  5. 4. 発注・検収(第4節)
  6. 5. 内部監査(第6節)
  7. 6. 履行状況報告と体制整備等自己評価チェックリスト(第7節)
  8. 7. 体制不備・不正への措置(第7節・第8節)
  9. 8. 年間で回す体制整備の実務
  10. 9. 学内で決めること
  11. まとめ

文部科学省または所管の配分機関の対象制度による競争的研究費等を受ける研究機関は、文部科学省の「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に沿って管理体制を整え、文部科学省が求める書面等の報告と、年度ごとの通知で提出を求められる体制整備等自己評価チェックリストに対応します。ガイドラインは本文だけで数十ページあり、研究協力課や経理の新任担当者が「何をいつまでに整えればよいか」を読み取るのに時間がかかります。

この記事では、令和3年2月1日改正のガイドラインの要点を、責任体系・誓約書・発注検収・内部監査・履行状況報告・体制不備への措置の順に、公式文書の文言で整理します。対象は文部科学省または所管の配分機関の対象制度(年度ごとに公表)による競争的研究費等を受ける機関で、大学の全ての支出に及ぶものではありません。自機関の規程・実施計画が優先で、本記事は読み解きの補助です。

結論:責任者3階層と監事の役割を明文化し、事務部門による発注・検収と当事者以外のチェック、内部監査、年度ごとのチェックリスト提出を回す

  • 機関は最高管理責任者・統括管理責任者・コンプライアンス推進責任者の3階層で責任体系を定め、職名を公開します。監事は不正防止の内部統制について機関全体の観点から確認し、意見を述べる役割を持ちます
  • 全構成員に誓約書の提出を求め、コンプライアンス教育と啓発活動を継続します。取引業者にも、取引実績やリスク等を考慮したうえで誓約書等の提出を求めます
  • 発注・検収は原則として事務部門が実施し、当事者以外によるチェックが機能する仕組みを作ります(検収とは|大学の納品検収と検収センターの役割
  • 内部監査は最高管理責任者の直轄組織が行い、公認会計士等の専門家を活用し、監事(会計監査人を置く機関では会計監査人も)と連携します
  • 年度ごとの通知に基づき、体制整備等自己評価チェックリストを最高管理責任者と監事の確認を経てe-Radで提出します。体制に不備があると管理条件の付与、間接経費の削減(上限15%)、配分停止の措置があります

1. ガイドラインの位置づけと改正の経緯

ガイドラインは平成19年2月15日に文部科学大臣決定として制定され、令和3年2月1日に改正されました。改正後のガイドラインは令和3年4月から運用が始まり、第1〜6節の内容は令和3年度中に順次実施することとされています。2026年9月時点で、文部科学省のページ上に令和3年改正以降の再改正は確認できません。

令和3年改正の柱は、公式の「改正の概要」で次の3つに整理されています。

  1. ガバナンスの強化:最高管理責任者の決意表明と役員会等での審議の要件化、監事の役割の要件化、PDCAサイクルの徹底
  2. 意識改革:統括管理責任者による組織風土の形成、啓発活動の継続的な実施の要件化
  3. 不正防止システムの強化:内部監査への公認会計士等の参画の要件化、監事・会計監査人・内部監査部門の連携、コーポレートカードの活用など

背景として、不正の認定件数が毎年10件程度で推移し、謝金・給与や旅費に関する不正が増加傾向にあることが示されています。

2. 責任体系(第1節)

責任者位置づけ(公式文言の要旨)
最高管理責任者機関全体を統括し、公的研究費の運営・管理について最終責任を負う。原則として機関の長。職名を公開
統括管理責任者最高管理責任者を補佐し、機関全体を統括する実質的な責任と権限を持つ
コンプライアンス推進責任者部局等における実質的な責任者

それぞれに、基本方針の策定、実施計画の策定と報告、教育の実施と受講管理、啓発活動、モニタリングといった役割が定められています。監事は、不正防止に関する内部統制の整備・運用状況を機関全体の観点から確認して意見を述べ、不正発生要因が不正防止計画に反映されているかを確認し、役員会等で定期的に報告します。

3. 誓約書と教育・啓発(第2節)

全構成員に対し、コンプライアンス教育の受講の機会等に誓約書等の提出を求めます。誓約書に盛り込む事項は、機関の規則等を遵守すること、不正を行わないこと、違反した場合は機関や配分機関の処分と法的責任を負うことで、原則として自署です。取引業者にも、取引実績やリスク等を考慮したうえで誓約書等の提出を求めます(第4節)。教育に加えて、組織風土の形成に資する啓発活動を継続的に実施することが令和3年改正で要件化されました。

4. 発注・検収(第4節)

  • 発注・検収業務は原則として事務部門が実施し、当事者以外によるチェックが有効に機能するシステムを構築する
  • 研究者による発注を認める場合は、一定金額以下など明確なルールを定める
  • 当事者以外の検収が困難で省略する場合は、抽出方法・割合等を適正に定め、定期的に抽出による事後確認を行う
  • プログラム・保守点検などの特殊な役務も検収対象とし、成果物がない場合は立会い等により現場確認する

運用の具体例は検収の記事にまとめています。購買・研究費管理システムで発注データと検収記録を照合できる構成にしておくと、この節の履行状況を示しやすくなります(研究費管理システム比較)。

5. 内部監査(第6節)

内部監査は最高管理責任者の直轄的な組織が担い、毎年度の形式的なチェックに加えてリスクアプローチによる監査を行います。「公認会計士や他の機関で監査業務の経験のある者等」の活用と、監事(会計監査人を置く機関では会計監査人も)との連携・定期的な意見交換が求められています。

6. 履行状況報告と体制整備等自己評価チェックリスト(第7節)

文部科学省は書面等による報告を機関に求め、機関はこれを提出します。調査には、毎年一定数を抽出する履行状況調査、機動調査、フォローアップ調査、特別調査があります。

令和8年度の体制整備等自己評価チェックリストは令和8年4月1日付の事務連絡で示され、公的研究費の執行前に提出すること、提出期限は制度ごとに公募要領で設定されること、継続分のみを管理する機関等は令和8年12月1日までとされています。最高管理責任者と監事(相当職)の確認を経てe-Radで提出し、科研費の管理機関は「内部監査の実施状況」「研修会・説明会の実施状況」の添付資料を付けます。

令和7年度の履行状況調査は20機関(チェックリストからの抽出10機関と不正事案の報告機関10機関)を対象に行われ、令和8年3月19日に有識者会議で取りまとめられています。

7. 体制不備・不正への措置(第7節・第8節)

体制に不備がある場合の措置は段階的です。

  1. 管理条件の付与(履行期限1年)
  2. 間接経費の削減。削減割合は段階的に引き上げられ、上限は間接経費措置額の15%(履行未認定1回で5%、2回で10%、3回以上で15%。重大な不備は付与の翌年度から5%)
  3. 配分の停止

不正が認定された場合は、交付決定の取消しと返還、研究者の申請・参加資格の制限があります。告発の受付から210日以内に最終報告書が提出されない場合、翌年度1か年度の間接経費が上限10%まで削減されます(遅延30日未満で1%から180日以上で10%まで)。文部科学省は不正使用事案の最終報告の概要(機関名・年度・内容・金額・関与人数)と措置状況を公表しています。

8. 年間で回す体制整備の実務

時期やること根拠
年度当初実施計画の策定、責任者の職名公開、チェックリストの提出準備第1節・第7節
執行前〜公募要領の期限体制整備等自己評価チェックリストをe-Radで提出(科研費管理機関は添付資料2種)。年度ごとの通知で確認令和8年4月1日事務連絡
通年コンプライアンス教育・啓発活動、誓約書の徴取、事務部門による発注・検収と当事者以外のチェックの運用、抽出による事後確認第2節・第4節
年度内内部監査(形式チェック+リスクアプローチ)、監事(会計監査人を置く機関では会計監査人も)との意見交換、役員会等への報告第6節・第1節
随時告発対応(受付から210日以内の最終報告)、不正防止計画の見直し第8節

9. 学内で決めること

  1. 3階層の責任者と監事の役割を規程に落とし、職名を公開しているか
  2. 誓約書の様式・徴取のタイミング(教育の受講時)と、取引業者向けの誓約書
  3. 研究者発注の金額上限、検収の場所と例外類型、抽出事後確認の割合
  4. 内部監査の直轄組織と、公認会計士等の専門家の関与方法
  5. チェックリストの作成担当と、最高管理責任者・監事の確認手順
  6. 不正防止計画への発生要因の反映と、役員会等への定期報告

この整理を自機関の規程・会議体に当てはめるところで支援が必要な場合は、導入・ルール作りの相談をご覧ください。

まとめ

公的研究費ガイドライン(令和3年2月1日改正)は、責任体系の3階層と監事の役割、誓約書と教育・啓発、事務部門による発注・検収と当事者以外のチェック、内部監査、文部科学省への履行状況の報告を機関に求めています。体制不備には間接経費の削減(上限15%)や配分停止の措置があります。年度当初の実施計画、執行前のチェックリスト提出、通年の教育・検収運用、年度内の内部監査という流れで回し、規程と担当を先に決めておくことが体制整備の実務です。

出典・参考情報

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